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いまはむかし

今回は作風の変遷にについて書いてみようかと。

この記事を書きはじめてから随分と経ってしまいました…。今年もゆるりとよろしくお願い致します。


※後半の方に何点か人体欠損などの痛ましい表現のある立体作品の画像がありますので、苦手な方はお気をつけ下さい。




現在、平面・造形の作品を合わせて発表をしていますが、この形になったのは2019年の秋頃から。

また今の作風の兆しが見えてきたのも割と最近で、2018年にチェコ共和国への留学していた頃でした。

修了制作で人形劇の制作を予定していたものの、舞台や人形劇の制作は未経験。

制作を始める前に何処かで学ぶ時間を取らなくては…と考えており、せっかくなら文化として人形劇が根付き、今も発展を続けている国で学んでみたい…という思いからチェコへの留学を決めました。

そんなこんなで教授に色々指導してもらいながら、描き始めた人形劇にする物語のイメージスケッチが現在の平面作品の作風の原型となりました。

それまでも絵を描いてはいたのですが、あまり作風がしっくりこず暫く続けては別の作風を…となっており、この人形劇のためのイメージスケッチを描き始めた時に初めて「これかもしれない」としっくりくる感覚を得たのです。


さて、時を遡って2015年。作家活動のようなものの始まりのきっかけは学部4年次の秋の大学祭でした。

有志展示に出した作品をお目に留めて頂き、お声掛け頂いたところから企画展に少しずつ出品させて頂くようになりました。

そのきっかけになった作品は真っ白な半立体作品でした。




『貘の夢月夜』(2015)

これは卒業制作のための表現実験として制作したもの。

2013年に制作した物語の挿画を半立体の造形に起こし、線画を陰影で表現する為、着彩は白に絞っています。

この作品を経て、卒業制作では8つの場面から成る物語のイメージを同じ表現方法で制作したのが以下の作品。



『夜から闇が消えたなら』(2016)


パネル1枚が90 x 100cm なので、自分の中では1番規模の大きい作品となっています。

卒業制作の頃は内的世界については言語化も認識もあやふやでしたが、重要なイメージはこの頃から収集をしていた為、物語の中に組み込まれています。

物語の詩文に加え画像も少し多めなので、こちらについては次の記事に後日まとめますね。


兎にも角にも、この白い半立体の作風で声をかけて貰ったのだから…と自ら縛りというか呪いをかけてしまい、早速迷走。作家活動の指針も何も見えず、今思うと本当に恥ずかしい限り。

後に、ひっそり敬愛していた作家の先輩に「何やってたんだ」と言われる始末…。とはいえ道のりを振り返るとちゃんと今に繋がってはいるので、遠回りの時間を惜む気持ちはありつつ、これで良かったのかな、とも思っています。


企画展などの作品販売のある展示では基本的に立体・半立体の縛りが自分の中で続きますが、その間も絵は描いており、卒業制作を終えたあたりからまず水彩の絵をちらほら描き始めます。




それから暫くして、もう立体に色を付けて良いんじゃないか…と『不思議の住人』を作り始めました。この時に制作した住人たちは2017年の学祭の展示でお披露目。ちなみに、この不思議の住人はいつからか視界の隅に感じていた存在たちを形に起こしたものです。内的世界の住人でもあるようなのですが、私の現実にもやんわり存在しているので間を繋ぐ存在のようです。



『不思議の住人|原始(2016)』




造形作品の方は少し呪縛から解放されますが、絵の方はしっくりこないな…と2016年の秋頃には卒業制作の線画と水彩の間くらいの雰囲気のペン画を描き始めます。

しかしやはりしっくりこない…と、暫く造形と内的世界の探求の方に集中する事となりました。造形の方は、今より少しえぐみが強い作品も多かったように思います。


『喪失』『待機』(2017)


この作品は「天国と地獄」をテーマに制作したものです。戦いの果てに憔悴した天使と、その堕天を今か今かと待ち構えている悪魔を制作してみました。その前までは立体で不思議の住人シリーズを続けて作っていたので、この作品を出した当時少し驚かれた記憶があります。



『落とし子』(2018)


これは自分の中では自画像的なイメージで制作したものです。タツノオトシゴをモチーフにしています。

私の父は名前に“龍”を持っており、その子どもである自分は「龍の落とし子だ」と父が楽しそうに言うのを聞いている内に親近感を抱くようになっていました。その落とし子が首吊りをしており、痛ましく見えてしまうかもしれませんが、悲痛さを込めたものではありません。そうは見えなくとも、割と前向きな作品なのです。

ただ解説するには個人的な内容が多すぎるので、割愛させて頂きますね。

今もこの作品は自分の写し身のように感じていますが、また新たに自画像的な作品を作るとしたらどうなるのやら。



そんなこんなでいつの間にか修士2年。修了制作が差し迫り、もう少し考える時間と学ぶ時間が欲しいと休学、冒頭の留学へと至ります。

2017年の夏頃~チェコ共和国へ留学して始めの頃は水彩で絵を描いていたのですが、人形劇のプロットのイメージを描き起こすには1枚1枚にペンや墨など他の画材を併用する事にしたのが始まりでした。すると存外しっくりくる…と手応えのようなものをじ始めました。

その後、帰国して人形劇のためのイメージ作品として制作した平面作品が現在の作風の原形となります。



『おとぎをあゆむ』より第一場面(2018)


未だこの頃は女性像の髪の表現などが定まっていません。

ここから今に至るまで、基本的な表現の軸は保ちながら試行錯誤を繰り返しつつ制作を続けてはいますが、

以前描いていたペン画や、水彩画の雰囲気も融合してきているなと感じています。

造形の方にも平面の表現を取り入れた事で、少し表現の幅も広がりました。





『ゆえとの夜』(2019) 恐らくこの作品がその第一弾。ここ数年、毎年参加させて頂いている企画展「たんざく展」に出品したものです。

この立体表現を挟んだ事で平面の方の表現で曖昧になっていた部分が少し定まったように思います。




『おまじない』(2019)

いつも描いている女性像を造形化したもの。平面表現では彼女は常に横顔、または顔を見せない存在なので造形にする時はいつも苦労しています。

というか、まだ落とし所が定まっていないような…。でも、この作品はとても気に入っているものの一つです。よく制作物に対して「これはすぐに手元を離れちゃいそうだな…」と思うことがあり、おおよそその予感は当たるのですが時折、大きく外すことがあります。何度展示に出品しても、なかなかお迎えが決まらない。もうこれでお迎えが来なければ、うちの子にしよう…と最後の出展ですっとお迎えが決まることが幾度かあり、「この人のことを待っていたんだろうな…」と思ったりします。ちなみに、おまじないさんはもううちの子になっております。笑






『内的世界』(2020) 後ろ髪がカラスになっている女性像はこの作品の前にも立体化しているのですが、平面で描いているように作り込んだのはこの作品が1作目かと思います。瞳もガラスを入れたりして、新たな試みもしています。

まだ思うように出来てない部分もありますが、髪の毛のうねりが翼を広げ羽ばたいている雰囲気が気に入っています。この作品もお迎え待ちですが、いずれはうちの子になるのかも知れません…。



…とまあ、そんなこんなで今に至っております。

また最近は平面作品にも色を使ったり、少し画材も別のものを試したりとちまちま広げていたり。

また個展などの際には新たな試みのものなどもお見せできるよう準備しておりますので、その際には是非。


それでは、また次の記事で。

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