おとぎのあと
gallery hydrangeaさまにて開催頂きました個展『おとぎをあゆむ』無事に閉幕致しました。
大変な状況の中、ご来廊頂きました皆さま、SNSなどでご高覧頂きました皆さま、そして個展の開催・運営をして下さったgallery hydrangeaさま、誠にありがとうございました。改めて心より御礼申し上げます。
個展は3回目になりますが今回初めて自分が日々探求し、また作品として表現している内的世界そのものについて、まだまだ断片ではありますがお見せ出来たのではないかな…と思っております。何となくイメージはしていたものの、出品作品を全て展示した会場がどのような空気を持つかは読めない部分もあり不安も多くありましたが、オーナーさまのご協力のお陰でイメージ以上に求めていた展示空間を作ることが出来ました。
今回は少し展示の振り返り…というか解説みたいなものをしてみようかなと思います。私の制作している作品やそこで表現している内的世界については、前回の記事をご参照頂ければ…。
では個展会場内の構成についてお話しする前に、内的世界の時代の変遷について少し。
内的世界において、私が認識している大きな時代の分類は以下のようになります。
闇以前(或いは太古) → 闇 → 古い時代 → その後
もともと私が初期に認識していたのは《闇》の時代からでした。暗闇の中、目覚めた月が寂しさに零した1つの涙が流星となって地上へ落ちた所から世界は始まります。しかし、その後の収集や考察の過程で闇へと至る何か大きな悪い事があったことが分かりました。つまり、始まりと思っていた情景は2度目の目覚めのものだったわけです。
ただ、前の時代の存在が明らかになっただけなので相変わらず詳細は不明。でも僅かですが、その太古の時代の景色にまつわる扉も収集しているので分からないなりに、作品に起こしてみるつもりです。
この辺はまたいずれお話しするとして、今回の展示では《闇》~《古い時代》、《その後》の世界にまつわる作品たちを集めました。
ギャラリーに入って左手側には《闇》~《古い時代》にまつわる断片を集めています。
(机の上には《闇》〜《古い時代》《その後》に関するメモ、またそれにまつわる 収集物標本を展示)
このエリアにまとめられた内容については以前、制作した『古い物語』(2020)という作品の中でも描いています。
この物語についての詳細を文字に起こしてみたのですが、まあなんと野暮ったいこと…。
会場でお話しするような感じで説明的になり過ぎたのもありますが、やはり物語に対して適切な言葉の形や媒体を見つけてから語るべきだな、と思い至りました。兎にも角にも、語るべき場は此処ではないようです。
さて、一方ギャラリーに入って右手奥側に《その後》の世界にまつわるもの達を集めています。
ここでは時系列というものはあまり存在していません。中にはどのような物語があったのか少し分かっているものもありますが、基本的に見つかった内的世界の住人たちや情景を種類ごとに集めました。
そして右手側の壁面。
ここには星と月にまつわる作品たちを集めていましたが、基本的に時代区分は明確ではありません。『星が降る』については《その後》になりますが、他の作品たちは《闇》以外ならいずれの時代でもあり得るな、という感じです。
これの見分け方については、基本的には旅人(白衣、或いはマントの黒髪の女性像)の有無で判断する形になるのかな…というところです。
彼女はこの内的世界を旅する者の象徴である為、私自身であると同時にこの作品たちを見ている人たちでもあるのかな、と思っています。時折、住人たちと触れ合うこともありますが、基本的には通り過ぎる存在のようです。会場でお話ししていた方の「彼女よりも内的世界の住人たちの方に共感が出来る」という言葉が印象的でした。
最後に、タペストリーもどきについて少し。
gallery hydrangeaさまの空間はどこを取っても好きなところだらけなのですが、あの天井の高さに合った演出が出来れば…と個展開催が決まった時から考えており、とにかく何か吊り下げよう、という事だけ決めていました。当初は大きな夜連れカラスを作ろうかとも思っていたのですが、丁度、別の作品に使えそうかな…と持っていたアンティークリネンがあるのを思い出し、以前から作ってみたかったタペストリーもどきの制作を決めました。
やはり描くのは内的世界の全貌かな…と始まりの星から月に至るまでの情景を縦型の構成で描いてみました。
この作品については、また今後もじわじわと加筆などを続けてライフワークにするつもりです。なので、また別の機会にまた展示する時は、装い新たになっていることでしょう。現在の制作場にはこれを吊り下げて飾れるだけの天井の高さが無いので、暫く眠らせることになってしまいそうですが…。
それに、いずれはちゃんと織のタペストリーも作りところ。一つ作るとまた二つ、三つと新たに作りたいものが浮かぶのは苦しさもあるけど、とても嬉しいことだなと思ったり。
ついでに使用した布についても少し。使用したのは1800年代のドイツの手織りで作られたデッドストック品のリネンで、味のあるオイスターカラーの風合いに惹かれ迎えたものでした。
まっさらな状態でも美しく、ここに自分の絵を新たに描いてしまう事に少し後ろめたさや背徳感がありました。しかも布への描画はかなり久しく、描き出しはかなり緊張しました。ぶっつけ本番で失敗…というわけにもいかないので、ギャラリーの天井の高さに合わせてカットした余り布で少しお試しをすることに。
それが会場でグッズとして販売していた布ドローイングになります。普段の画材とはまた違った風合いで、自分でも気に入っているのでこのシリーズも続けたいなと思っています。とはいえ手元の余り布が残りわずかなので、また別の布を探さなくてはですが…。
ちらほら余談も挟んでしまいましたが、今回の個展はこのような構成でまとめてみました。
作品に起こせていないものが多く、色々と反省などもありましたが、自分の表現活動の目標へ向かう為の大事な一歩になったと思います。
個展会期中、全日程の在廊は出来ませんでしたが、懐かしい人に会えたり、思いがけない人にお会い出来たり、ご来廊頂いた方ともお話しして新たに気付けた事も沢山あり、とても実りの多い幸せな時間でした。
この先、何度でも言う気がしますが、在廊への苦手意識は変わらずで、なかなか上手くお話し出来ずで大丈夫だったろうか…と不安な気持ちもありますが、楽しんで頂けていたら良いな…と願っております。
今後も内的世界の探求と表現活動に精進して参りますので、そっと見守って頂けましたら幸いです。
それでは、また次の記事で。
misumasenue
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